秋うらら
リリー

 西陽とたわむれる
 噴水の水の音は
 子どものようにまるくなってかけまわり
 わたしへ小さく手を振って
 「またね」
 …… 、

 鈴懸の樹が葉を落とす風に鎮もる

 涼風にのって空へのぼった
 「またね」
 は、ずっと昔の秋うらら
 デパートの屋上に上がっていた
 あのアドバルーン!
 思わず
 「またね」
 を返す わたしの隣で
 ガーデンベンチから立ち上がって
 噴水の白い滝へ消えていく
 ランドセルの女の子

 口をつぐんでしまった水音さやかに
 辺りも翳ってきて
 灯ったうすいオレンジ、首に巻く絹のストール
 
 
 


自由詩 秋うらら Copyright リリー 2024-10-06 09:27:06
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