詩想、「自己存在」という問い・今の私という境地3.
ひだかたけし
空間を生きるものは、
光の中で存在を体験する。
時の流れを歩むものは、
創造行為の中におのれの力を感じる。
心情の深みの中にいるものは、
宇宙をみずからの中に見出そうとする。
空間の広がりの中から、
時間の歩みの中から、
心情の深みの中から、
魂が神霊の想いを語るー
〉おお、人間よ、汝自身を知れ。〈
それは、神の救済力の言葉であり、宇宙の形成力の言葉である。
しかしお前は、
深淵に注意を向けなければならない。
そうしないで、
いそいで境域を守護する私のそばを通り抜けようとすれば、
深淵から獣たちが現れて、
お前を呑み込んでしまうだろう。
お前自身の宇宙時代が
この認識の敵たちを呼び出した。
第一の獣を見よ。
その曲がった背を、骨ばった顔を、乾からびたからだを。
「霊の創造力」へのお前の恐怖が、
お前の意志の中にこの怪物を生み出した。
それに打ち克つことができるのは、
お前の認識への勇気だけだ。
第二の獣を見よ。
顔をゆがめ、歯をむき出し、
嘘をついてあざ笑い、
薄汚い黄ばんだからだを見せている。
「霊の開示」へのお前の憎しみが、
お前の感情の中にこの弱虫を生み出した。
お前の認識の火で、この獣を押さえ込まなければならない。
第三の獣を見よ。
その裂けた口を、ガラスのような眼を、
だらしない態度を、汚れた赤い姿を。
「霊の光」へのお前の懐疑が、
お前の思考の中にこの妖怪を生み出した。
認識の創造力でこの妖怪を
退けなければならない。
この三つの獣を克服したとき、
お前の魂は、
深淵を飛び越える翼を得る。
お前は心に憧れを抱き、
救済を求めて認識に身を捧げようとした。
しかし深淵が、これまでお前を認識の原野から隔ててきた。*
*ルドルフ・シュタイナー『秘教講義1』より、高橋巌訳文、一部筆者により補足