物語②
はるな


びしょびしょの翅をふるわせて、せみたちが木々の間を抜けていく。街は恋を消費して育つ、夏のせいで深い森になってしまった。
あなたの頬はかたく、髪はつめたく、息はせつない。わたしたちの時間は狭く、言葉は限りなく、深い肌のすき間に潜っていく。
潜っていく。バターまみれの指。天井。旋律と傾き。物語たちが、待ちくたびれて飛び立っていった。



自由詩 物語② Copyright はるな 2024-08-20 16:22:25
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