熱の同心居
ひだかたけし
街の通り花壇周りの草むしりするおばさん達、
ぽつぽつと明かり橙に灯る小さな美容室、
青いバット握り締め素振り繰り返す少年、
サイレース貰いに早朝のバスに乗り込む私、
この街の営みの傍らに殺戮の戦いの傍らに平和の祭典の傍らにこの街の
帰り道に咲き誇る見事な花の名を知らずに
スマホ歩きする若者達避け歩き進みながら
道端に落ちひしゃげた蝉の抜け殻拾い見て
脇に開け噎せ返る森林の緑の香を吸い込み
何故か昨夜の意識の視界に浮かび来た光景、
仄かオレンジに染まる
地平遥か彼方の空へ
ぐんぐん伸びゆく白い途
暴力的な迄に迫り喰い込む
ヒビキヒカリ放ち織り込まれ
沈み込み沈みゆく奥へ億へ
あれはなんだったのだろう?
そう想いながら私はしばし佇み
手の平に乗せた黄金にも近く艷やかな蝉の抜け殻、
眼前の樹木の天へ向かい伸びゆき
陽に照り映え輝き揺れる緑の群れ
その突端を眼差して熱持ち思いっ切り投げ入れる。