非在の果実
ただのみきや
太陽は慰めない
空は悲しまない
雨は歌わない
誰もいなくても
人はそうやって
ながくもなく
みじかくもなく
はやくもなく
おそくもなく
香は燃え尽きる
すべては鏡で
なにも映さず
すべては木霊で
なにも返さない
影は蓄えるものを選ばない
耳は鳥のよう
目は蓮のよう
罌粟は血のグラス
蜜蜂は金粉をこぼす
真偽はことばの外にある
バベルの分断なら
気持ちを探り求めただろう
通じる故の断絶は
ざらついた感触から
仔猫の遊びが招いた惨事
ことばは笑わない
ことばは怒らない
ことばは泣かない
ことばは愛さない
最後まで手放せない無花果の一葉
(2024年7月7日)