七夕
秋葉竹


 

天の川銀河に
恋を希っても
叶えてくれない気がするな
いつぶりか忘れてしまったけど
短冊にねがいごとを書いて
笹の葉に吊るそうかなと
想ったよ
行列のできるお饅頭屋さんの
店内に
そういうコーナーがあって
ある短冊には
「祈念能登復興!」
とか
べつの短冊には
「スマホがほしいです」
とか
筆ペンで書いたからかな
よくある最初の「スマホ」だけ
めっちゃ大きくて
「です」ははみ出るのを防ぐために
「ス」の五分の一以下の小ささで
書かれてた
小学生低学年なんだろうかな
親の目の前で書いたんだろうか
とか
いろいろと情景が浮かんで
微笑ましかった

七夕って
彦星と織姫に祈りを希うわけじゃないよね
中国発だから神さまというより
天帝さまかな
よく知らないや
けど
そのお饅頭屋さんにぶら下がってる
短冊のなかでそのふたつを読んで
私の希いは
ここに吊るすようなものではないな
と想ってしまった
ちょい
生々しすぎるかな
とか

秋風が
吹いてたあの部屋ふたりして
夏までもつかと笑い合ってた

天の川
などに波など立たなくて
想い出さえも川面に消えゆく

もし在れば
天の川でも渡ったよ
半月ふたつでひとつの満月

どの船も
漕ぎ出せないまま天の川
川原にゆく道さえも知らずに

涙より
熱い水など無いだろう
頬の上べを濡らすな死の神

天の川
その波音が騒がしく
聴けずに過ぎる恨みも希求も


ちょっと
私の希いは笹の葉に吊るすほど
清くもなく
すき通っても
いないから

短冊の数枚吊るされた
行列のできるほど
美味しいお饅頭屋さんの
七夕コーナーの笹の葉を
行列に並びながら
けっこう
けっこうな時間
なにもみてないのに
じっと
眺めていたよ










自由詩 七夕 Copyright 秋葉竹 2024-07-07 09:05:21
notebook Home 戻る