なみだ
本田憲嵩
なみだ、
ぽろぽろと剥がれ落ちてゆく、
頑ななウロコの溶解、
あつい塩水が、
頬をつたうたび、
こころは、
飾らない、
まっさらな素裸になる、
なみだ、
かけがえのない、
白紙のページにもちかい、
その清浄さ、
やさしさや痛みから溢れでた、
透明な血液ならば、
君はそのとき、
きっと世界中の誰よりも優しく、
そして美しくなっている、
なみだ、
眸に滲みでる、
やさしさと痛み、そのひかり、
そのきらめく結晶は、
理屈や道理の次元をはるかに超えて、
灯火よりも明るく、
なによりも先駆けて、
ひとの頬をつたってゆく、
もっとも美しい、
水の彗星、
なみだ、
それは、なみだ、
かけがけのない、
ひとの、