去りゆくだけの部屋で
由比良 倖

「何かひどいことを言いそうで怖いんだ、」

また帰って来て、私は頭の中を行進している。
生きることの密度に怯えている。

だってまた私は死んでいるのだし、
大きな紙を持ってきて、設計図を描いて、
家の前に公園を作るための計画を立ててる、

呼吸はつらいし、数は営為には無意味で、
(そう多分すべてが衰退したとき、
(何も考えずに草を食べながらすべては終わって、
(眠る前の子供たちとか、
(歩くことを憶える前にもう泣き尽くしてしまったことや、

私は泳げないのに、また
何もかもが増刷されていく、

そう、夕方、点滅する信号機の傍で、
楽器屋の中から知らない音がした、
鮮やかなくらいに平らな音、

鬱のなかでは例えば7は暗い色で、

私はまた、時計とかの不動性に怯えている。

時間は、日々、そして私は無念に
ばらばらに行進してる。


自由詩 去りゆくだけの部屋で Copyright 由比良 倖 2024-07-03 00:38:10
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