由比良 倖

甘い甘い部屋の中。
遠い遠い、森の外れで、石鹸水のような
雨を浴びていたこと。
今はただ黒いキーボードをタイピングする
指先以外何にも感じない。

静かな静かな、まるで沈黙のような声を聴く。
空のリボンが僕を呼ぶ。
「チャンスはあるんだよ」と言う声がそれに続く。

……
父がいなくなってから、雑草だらけの家に住んでいた。
放っておいた草が、凍り付き、そして次に芽吹くこと、
そんなことも有名になってしまっていた。


自由詩Copyright 由比良 倖 2024-05-07 02:52:37
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