屋上
rabbitfighter

まだ屋上が開放されていた頃
手すりに背をもたせて煙草を吸っていた

思い出せる季節はいつも夏で
我々の影は強く輪郭を投げかけていた

ところどころペンキの剥げた
檻のような手すり

実際には聞いたことのない
空襲警報



聞こえた気がして

水の張った
赤いバケツに
まだ火の付いている煙草を爪弾いて

その軌跡を
回転しながら弧を描く
煙草を


圧力が原動力となり人々は屋上を目指さざるを得ない
あふれて
こぼれていく
手すりを乗り越えて


まだ、屋上が開放されていた頃。







自由詩 屋上 Copyright rabbitfighter 2024-05-04 20:53:08
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