狸囃子が聞こえる
ただのみきや

ささぶねにこころのせ
あてもなくただ見とれ
現をかさね朧にいたる
月日は散る花びらより
軽やかに水面をまろび
めぐりきれない永久の
肌の何処にまつわって
在っても見えなくなり
変らないのに忘れられ

          現の向こうに想い馳せ
          耳を当て堰を切る唇の
          血肉のイロハに染まる
          つめたい海月の心音よ
          なにものでもなくただ
          すべての時代と姦通し
          ふるえながら発熱する
          一個のリンゴのように
          被膜を破り死角に匂え


                    (2024年5月4日)



自由詩 狸囃子が聞こえる Copyright ただのみきや 2024-05-04 17:43:58
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