読点。
田中宏輔



読点でできた蛙


なのか
蛙でできた読点なのか
文章のなかで
勝手に
あっちこっち
跳び廻る





読点でできたお酒


ヨッパになればなるほど
言葉が、途切れ途切れになっていく
完全によっちゃうと
言葉が読点だけになってしまう





アインシュタイン読点


アインシュタインの言葉をもじって
文章で格闘しているひとたちが
みんな感服するような作品が書かれてしまったら
あとはもう棍棒のかわりに
読点を手にもって
殴り合いをするしかない
っちゅうたりしてね。





あなたが打つ読点に感じるの。


あなたが打つ読点
とてもすてき
すこし多いかなって思うのだけれど
そのすこしってところがまた、微妙チックで
感じるの
あなたの読点が
ぷつぷつと刺すの
そうして
まるで竹輪のように
筒抜けるの
わたし
オマルの
キューティー・ハニーたん
どこぞ~
どこぞ、行ってもうたん?





忘れられない一言とか


とかとかあるけど
忘れられない読点とか
忘れられない句点ってのもあるのかしら?
一瞬の沈黙が
その沈黙の表情が
記憶に刻みつけられはしても
読点や句点に表情はないものね~
ええ、ええ
ほんとですとも
そんなに臭いのかしら?
それを渡すって





マルはいや


マルはいや
ぜったい、いや~
ああ
すっきりした







ぼくは知っている


ぼくは知っている
あなたが
そこに読点を打ったり、取り外したりしているのを
あなたは、何度も読点を打ったり、取り外したりしている
いったい、そこが
あなたにとって、どんな意味を持つ場所なのかは知らないけれど





読点の山


それは
けっきょく使われなかった読点の山だった
それじゃ、針山だっちゅうの。
句点の山より大きいけどね~





無数の巨大な手が


地面に
読点をずぶずぶと突き刺す
みたいな感じぃ
H鋼材みたいな読点を







読点ポール


だじゃれね、笑。





やわらかい読点


おすと
ぐにゅっとまがって
句点になるの





ぼくは愚かだった。


読点にも、ひとつひとつ表情があったのだ。
違った場所に置かれた読点には、その置かれた場所での表情があったのだ。
わたしたちが同じ顔でも、時と場所に応じて違った表情をするように。
ちょっとした役者なのだ。
いや、ずいぶんと役者なのだ。
読点は。





どぼどぼと読点を吐き出す女のように


派遣の読点だからって
なめんじゃないわよ。
きっちり読点の役目は果たしてるわよ。
正社員と同じだけ働いてるわよ。
保障はないけど
だからって手は抜かないわよ。





読点


読点は言葉を縫い付けていく
雨が地面にひとを縫い付けていくように





ちまたに読点が降るように


雨も、ちまたに降っている。
螺旋階段が欲しいから螺旋階段を3階までつけたパパ。
桂の叔父さんちにはプールがあるからといって
庭に小型のプールのような巨大な水槽をつくらせたパパ。
小学生のときのことだった。
ぼくはママを屋上から突き落として殺してやろうと思ったことがある。
小学生なら疑われることはないからと思ったのだった。
あのとき突き落としていたら、どうなっていたかなと考えることがある。
しばしば思い出しては、頭のなかで突き落としている。





派手な読点と、地味な読点


ときどき
ぼくが打つ読点は派手なこともあり
地味なこともある。
やさしい読点もあれば
きびしい読点もあるし
寒い読点も
熱い読点も
甘い読点も
辛い読点も
渇いた読点も
濡れた読点もある。
気体の読点や
液体や固体の読点もある。





宇宙中にあるすべての読点を集めても


コップ一個を満たすこともできないと言われている。





草野心平じゃあるまいし


人民たちが句点や読点に飢えていると耳にした王女は
疑問符や感嘆符やその他の記号で十分じゃないの
と言ったという。
その顔には幼な子のような笑みを浮かべ
その手のなかでは句点や読点をもてあそびながら。





リルケの遺作『ミュンヘンにて』を読んで


亡くなってから小部数出版されたというのだけれど読点
まるでトーマス・マンの『トニオ・クレーゲル』や
『ヴェニスに死す』を読んでいるような気がした句点
ただし読点マンの作品に出てくる主人公たちは立派な芸術家で読点
リルケの作品に出てくる主人公は詩を書きはするけれども読点詩人と
言うには実績のない主人公で読点詩集も出してはいなかったのだけれども句点
リルケ23歳のときの作品だったらしい句点
ぼくが23歳の時には読点ほんとうに稚拙な文章しかかけなかった句点
比較するのは不遜だけれども読点笑句点





量子状態の読点


一字あけ

読点






読点の時制


読点自体に
過去形や現在形や未来形や
現在完了形や過去完了形がある
と考えてしまった。
一度考えてしまったことは
なかなか頭から去らない。
肯定や否定や疑問
付加疑問とか感嘆とかも、笑。





言葉じゃないのよ


大事なのは、句点や読点といった記号なの。
言葉じゃないのよ。
句点と読点といった記号に目を凝らすのよ。
それに言葉以上の意味を持たせてあるんですからね。
当然よ。
きょうは、インスタント・ラーメン3個食べたわ。
5個で178円だったわ。
吐きそうよ。
シンちゃんがスコッチ・ウィスキーを持ってきてくれたから
ひとりで飲んでたわ。
すぐに帰ったから。
ぜんぶ飲んだわ。
3分の1くらいしか残ってない飲みかけのボトルだったから。
吐きそうよ。
航海してるわー。
after here


に目を凝らすのよ~。





もしも、一生使える読点の数が決まっていたら


もしも一生使える読点の数が決まっているとしたら
と、ふと思いついたのだけれど
言葉だってそうだけど
一生使える数や量は決まってるんだよね。
ひとによって、その数や量が違うだけでね。





読点とコンマ、句点とピリオド


なんか似てる。
ヨーロッパ言語は、だいたいコンマとピリオドなのかしら?
アフリカとか、アジアとかは、どんな記号なのかしら?
スペイン語にはクエスチョン・マークを逆さまにしたものもあったけれど
韓国語は、読点や句点なのかしら?
それとも、コンマやピリオドかしら?
中国語は、どうだったかしら?
ああ、ぼくって、知らないことだらけだわ。
このまえ、滋賀に住んでる、ノブちんをひとまわりデブにしたような
ヒロユキの口のなかに
指を入れた。
身体を文章にたとえれば
指は読点のようなものかもしれない。
ヒロユキの口のなかで
ぼくの読点があたたかった。
ヒロユキは、ぼくの読点を
目をつむって、ペロペロなめていた。

口に指を入れたら
日になるのね。
二本入れたら
目ね、笑。
日本は
入れたことないけど。





言葉退治


おじいさんは山で言葉狩りを
おばあさんは川で言葉すくいにきていたら
川の上流から読点や句点がたくさん流れてきました。
おばあさんは流れる読点や句点を見て
自分の身体を流れ去った読点や句点のことを思い出しました。
おじいさんが山から帰ると
おばあさんは持ち帰った読点や句点を、おじいさんに見せました。
読点や句点は、おじいさんの手のなかでケラケラ笑いました。
ほんとうにかわいらしい読点や句点でした。
やがて、読点や句点は大きく育ち・・・





読点と句点を重ねると、空集合Øになるのね。


桃太郎が海で
句点たちにいじめられている読点をたすけました。
ただそれだけで、読点は、なんもお礼をしませんでした。
まあ、それで、女たちは
人生において、やたらと読点や句点を使いたがるのね。
まっさらだわ。





20センチの読点


いまゲイのサイトを見てたら
(ゲイの売専の店のHPね。)
「デ、デカイ!
 デカすぎるのでは?
 絶叫モンです!
 入れるテクに句があることと
 より快楽的なエロキャラのため
 つながりたい人にオススメです!」
22歳
176センチ
70キロ
アスリート体型の
ゆうじくんのって20センチもあるから
とかとかいうので
20センチの読点は
まあ、看板とかでだったら見たことあるけど
太い読点を瞼の上にのっけてるひといるよね。
20センチの読点だと、壁にそって流れ落ちる雨粒のように
無数の眼球が流れ落ちる。
すると
眼球が見る街の景色は
するすると天にむかって上昇していく。
20センチの読点か
やっぱり大きすぎるわ。
ぼくにはムリ。
「基本的に
 ぬいぐるみ? 犬?」タイプです!
とのこと。

テクに句が

テクニックね。
すまそ。
えっ?
そうね、そうだよね。
20キロの読点のほうがおもしろそうだよね。
でも、どっちにしろ
ぼくにはムリだけど、笑。








自由詩 読点。 Copyright 田中宏輔 2024-04-19 01:45:06
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