隣りの海
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隣りの海で 鯨が髭を磨いてる

海老が抜けない
ささらに破れた尾びれを揺らし
海老が抜けないのです、と

わたしも歯茎を押しひろげ
まぶされた砂をはらい

やせた少年がくらりと傾いて
弦に弓をあて そっと動かしたい

唇の匂いが
あふれひろがる
深くて くらい記憶の網で
波の頁を掬えば
春の星座も また漂っているだろう

少女は静かに 花とからだを重ね
お日さまの息を確かめていて
翼の影から
しずかに散乱するだろう
見あげる雲へ 腕をまきつける
老人の瞳
片脚立ちに固まった夢をひきつれ

その隣りに おかれたひかりの輪を
なおして、なおしてと
星をつかみつづける





自由詩 隣りの海 Copyright soft_machine 2024-04-08 05:48:50
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