データ(幽霊)
猫道
エイプリルフールにぴったりな報告がある
4月1日から公職に就いた
自分でも驚いてる
生きていてしんどい人を支える仕事だ
勤務初日 職権でデータベースにアクセスし
最初にしたことは死んだ友達の名前の検索だった
データはすぐに出てきた
北の町で劇団をやっていたこと
東京で一緒に暮らしていた彼と別れたこと
働いても人間関係がうまくいかず
生活保護で暮らすようになったこと
なんとか暮らしのリズムを立て直し
働こうとしていたこと
職場実習に行っていたが
数日後に体調不良で行けなくなったこと
実習先に上履きが置いたままになっていて
取りにくるように2回促されたところで
彼女の記録は途絶えた
亡くなる前の年だった
膨大な量の「生きててつらい」の履歴を遡り
クリックして墓参り
のつもりが
図らずも自分の中に彼女を生き返らせることになった俺
琥珀に閉じ込められた 蚊の吸った血液から
DNAを取り出して 恐竜が復活
ジュラシックパーク イン マイ ヘッド!!!!!
永遠にまだあたたかい彼女の足跡
置いたままになっている上履きは
データベースの中にいつまでもいつまでも残り続ける
データって幽霊だったんだ
俺の背後にいる2400人のフォロワー
幻
思い出
轍
イメージ
欲望
データの中で久しぶりに会った彼女は
死んでるのに生き生きとしており
一方 モリマサ公は生きてるのに
データの更新が止まったまま
久しぶりの勤め人
週5日の心肺停止を経て 土曜日の昼間
俺は大きく息を吸い込み 朗読会に向かう
思い切り吐き出すために
データじゃなく 幽霊じゃなく
人間に会うために