四月の杞憂
ヒロセマコト

ひとりが好きな傷つきやすいあなたは
ある日突然
真新しい窮屈な制服を着せられて
教育者たちの話はうわの空で
たくさんの見知らぬ同級生と整列し
汗ばんだ手を握りしめる

十年後の四月
堅苦しいスーツ、窮屈な革靴
地下鉄の階段を降りて上って
時間通りに辿り着かなければ
頭上から号令が聴こえる
前だけを見て進め
私たちは歩兵だ

そして今
物悲しく鳴くヒドリガモの群れは
北へ旅立ち、川から姿を消した
入れ替わりにやってきたツバメが
せわしなく空を行き交う
きっと去年と同じ場所に巣を構え
やがて可愛らしい雛が顔を出すだろう

近くの竹林から響いてくるウグイスの声が
胸騒ぎを鎮める
あなたは四月を
もう恐れなくていい


自由詩 四月の杞憂 Copyright ヒロセマコト 2024-04-02 00:03:34
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