春偏愛
ただのみきや
音楽のせせらぎ
跳ねまろぶ輝き
クスクス笑いを隠すように
去っていった
あの永い一瞬
瞼の裏にホチキスで留めたまま
耳をふさぐ風
風のふところ
雲のにおい
クジャクチョウは目を覚まし
わたしは昏睡する
──神話の下層に埋もれていた
赤い紐で肉が食い込むほど
人の数だけ春はあって
来るのはいつも同じ春
この春と心中する
白紙に黄砂が積もる前に
真新しい鋏はツバメのよう
景色は裸でわなないて
────とける鈴 水の吸気
(2024年3月31日)
自由詩
春偏愛
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ただのみきや
2024-03-31 11:24:27
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