お花見
たもつ
部屋の中に桜が咲いて
僕ら三人は
お花見をすることにした
見上げるだけでも
綺麗なのだけれど
せっかくだから、と
レジャーシートをひいて
君が作ったお弁当を食べた
それからちょっぴりお酒を飲んで
娘は普段は飲めないジュースを
心ゆくまで堪能した
そしてシートの上に寝転び
そのまま三人で寝落ちした
手を繋ぐことが
こんなにも温かいのだと
じんわりと心に届く
目が覚めると
桜の木はどこにも見つからない
君も娘も
最初からいなかったように
部屋には誰もいない
僕の体があるのかどうかさえ
もうよくわからない
桜の花びらだけが
数枚床に落ちている
確かに桜は
この部屋で咲いていたのだ
(初出 R6.3.29 日本WEB詩人会)