ganja波羅蜜多
六九郎
葬儀社と契約を交わす
男は自分で決めたいタイプ
男は担当者に小さな包みを渡す
これは俺の葬儀で使うために手に入れた貴重なお香である
焼香に使ってくれ
担当者は恭しく包みを受け取り、何かをやり遂げたような満足げな表情で目を閉じた男の痩せた横顔を静かにみつめる
葬儀は型通り粛々と進む
慇懃なアナウンスと
よなれた坊主のこなれた読経と
担当者に促され
参列者たちは立ち上がり
焼香の列を作る
坊主はいよいよ読経の声を張り上げる
4、5人ほど列が進んだあたりで
坊主の声が甲高く裏返る
弔問客たちは気にしない
坊主の読経はいよいよピッチを上げていく
さらに列が進んだ頃、坊主の読経に時折変な声が混じり始める
ひっ、とも、へっ、ともつかない、は行のような破裂音
吃逆か、
馬鹿が裸で日光浴
馬鹿が裸で日光浴
坊主の読経は同じ言葉を繰り返している
死んだ男はその光景を見て
遺影の中でニヤリと笑う