皮肉
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棺を抱えていく
素足を放り出しながら
夏の夜の星が流れる空の下

見てみるには閉じきった扉で
窓らしいものは窓であることを辞し
開かれているのは行き止まりばかり

この中には眠っているあなた
口付け損ねた永遠のお姫様
シロツメクサでくるまれて運ばれる

瞬く度にこぼれるものは
命という名の悲しみなんですよ
生きていることそのものが夢

狂ってしまったはまゆうの咲く時を
そっと問いただしている神様の声が
あなたに少し似ているのです

私があざらしじゃなかったら
あなたは愛してくれなかったんでしょうか
でもずっと前から、これからもあざらしです

棺をそっと野原に横たえて
子守唄みたいに鎮魂歌を諳じる
海以外に心を、私は教わらなかった

もう目を覚まさないで
ずっとそばにいればいい
それが翼あるものの愛

ざんざんぶりの雨が降ります
海が干上がらないように
祈りながら燃え尽きて遡るんです

願いが月まで届いたとして
私を愛してくれますか
岩を穿つように真っ青な悲しみで

暗闇だから死んだ後光るのです
いつか星になってしまって
もう息絶えることさえ忘れたように

荒れ地にしか生えない樹のように
何も言えないまま
あなたのおとがいを噛んで笑う


自由詩 皮肉 Copyright 303.com 2024-03-26 21:24:37
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