生活者
鯖詰缶太郎

路上で
 あなたの作った歌を
うたって
お金をもらいました

全部で二千五十円でした

よっぱらった 二十代後半くらいの
サラリーマンと
両手首に
 数珠をいっぱいつけた
老婦人が 千円札を
一枚ずつ 投げ入れてくれました

五十円玉を投げ入れてくれた
男の人は 涙を流しながら
手が腫れあがらんばかりに
拍手をしてくれました

僕は つい はにかんでしまいました

その男の人は 全裸だったので
間もなく
おまわりさんがきて
羽交い締めにされ
パトカーに乗せられていました

あなたは 二十年前
この歌で ミリオンヒットを
とばすのだと
いきまいていました

あなたが 歌い始めると
壁がうすいから
よく 隣の部屋に住んでいる鈴木さんに
怒られましたね

当時 なんてイヤミな
クソジジイなのだろうと
思っていましたが
今 思い返すと
やっぱり クソジジイでした

今夜は
 あたたかい おふろに
    はいります

二千五十円のおかげで
 ガス代が払えました

はなうたを うたいました

曲名は 思い出せませんでしたが
水曜日のカンパネラの曲を
       くちづさみました



自由詩 生活者 Copyright 鯖詰缶太郎 2024-03-23 20:42:07
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