こうかいにっき。
あらい

春は庭じゅうに手をかける 暗い色の遅咲木ノ花に
そこにつくには、どこか、腥い憐憫を徹すような
頭が痛い 水臭い話 たぶん腐った果実酒のせいだ

いつか意図と玻璃を踏む
また奥から手前にかけて
惰性で滑り込ませている

ここは水底ですよとキミは桜吹雪を指し示して
わたしは目を合わせずに打ち上げ花火をみていた
あなたは、と問うと 紅葉を拾い上げる仕草、
ご覧の通りと首をすくめるチグハグの関係だった

精製する嗜好品は帆船に積まれている
使い古されて曇ったグラスのヒビごとなぞっていった
机上に透かした格子の舗装路、
どこへ向かうのか傷跡が生々しく
また零してしまったのか と うたた寝しては
やらかい吹雪の煤口を縛った 明日は我が身のゆき
おおくは細いメに見えぬほどのひつじを抱く
寄せたつもりが返される丸窓の白波が透けはじめる

例えるなら袖口から覗いていた女の形、
あつかましい太陽などあるものかと摘んで捨てる
その干からびた海路ばかりの茎だ
まぶしい朝に湧いたうなじの燐粉だ
そこへ肩を寄せ合うように群集があふれる
振る舞われた花の果肉はれさぞや甘かろか


縮こまるほどの寒さを含んだ黒山羊に
抱きとめられたあれは、いつのことだったか


いま、多くは靴底で詫びている
例えば吹き込んだ都会の木蓮だ、
崩れていくだけのコウノトリだ、
それでも名も無いネズミの一つ一つに
いのちを分け与えていたあなたは
不平を垂れつつも助手席にて
ビーカーに移された逆光の意味を解きながら
水に流された上の空ごと、
キミを現実の間に握っている
泳ぎきれないわたしは、
この大海原に溺れるだけ流され尽くして


自由詩 こうかいにっき。 Copyright あらい 2024-03-21 16:33:23
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