閑古鳥の楽譜
そらの珊瑚

一日一度静かに燃える家があり
今まさに燃えさかっている
そしてその近くの電線に
数羽の小鳥が舞い降りた
いつぞやのにぎやかさはどこへやら
今日の電線の音符は歯が抜けた様相
それでも音符たちは時折入れ替わりながら
少ないながらも展開を試みているが
小澤征爾さんでもどう演奏しようか頭を悩ませることだろう
世界のどこかでショパンが演奏されている
世界のどこかで銃声がとどろいている
作曲家が全霊を込めて産み出した音楽は
繰り返し奏でられ、これからも奏でられていく
人は人へ命を繋ぎ音楽もまた繋がれ
時間が経っても
言葉が違っても
人の哀しみや喜びのようなものは普遍なのかもしれない

いつのまにか かの家は時間の手で鎮火され
夕闇が最後の一羽を飲み込もうとしている
おまえはねぐらに帰らないのかい
それとも一番星が光るのを待っているのかい
オーケストラの最後のひとつの鐘が
祈りが
長く尾を引いて消えていくまで心を傾ける
そんな閑古鳥の鳴く一日が幕を下ろそうとしている


自由詩 閑古鳥の楽譜 Copyright そらの珊瑚 2024-03-18 08:58:23
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