エアリアル
ミナト 螢

眠りから醒めた夢が
空の中に溶けていく

名前も形も知っているのに
呼べないまま
その弱さでも
鳴らせるものが欲しかった

花が散る時に
ひらひらと聞こえるように
最後まで美しく
地面に降りること

だけど僕はこれから
色んな場所を飛び回って
時には重力に抗いながら
春の匂いみたいに
空と並びたい

心ばかりが旅をするけれど
体に連れて来て貰ったこと
忘れずにいよう

あの日の手の温もりを
何故だか探してしまう僕は
奥歯の隙間を噛み締めている

何度もやり直しながら
ひとつの人生を歩くなら
消せない傷痕さえ
花のように咲いて欲しいし

改札を抜けると
バラバラになる人の姿が
トランプみたいで
その後に選ばれる
運命のカードを
風のように吹き飛ばしたい


自由詩 エアリアル Copyright ミナト 螢 2024-03-17 14:56:39
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