指
ただのみきや
焼却炉は歌っていた
夢や人生
思い出を焼きながら
異臭を放ち黒煙が
空の裾をつかもうともがいていた
燃やしても燃やしても
機関車みたいに進みはしない
どこにもいけない
過去にも
未来にも
腹の中は地獄の業火
身じろぎひとつせず
焼いて
燃やして
燃え尽きて
火が 消えるまで
──いまはただ
冷めていくばかり
灰のなか焼け残った
黒焦げの塊ひとつ
暗いうつろを欹てれば
聞こえるはずのない
トイピアノ
さくらのはなびら
いつまでも木霊は続き
焼却炉は歌うのをやめた
(2024年3月16日)