共感の宝石
まーつん
傷ついた心は、高値の付く宝石
伝えるすべを持つ者たちが
言葉や音、像に添えて
ショーウィンドーに飾る
傷ついた心は、ため込まれた負債
精算できぬ者たちが
なけなしの硬貨と引き換えに
誰かの涙を固めて出来た、宝石を買う
人目のない場所で
その宝石を懐からそっと取り出す
石はキラキラと光っている
拾われた猫が、喉を鳴らすように
その宝石の
磨かれた面の一つ一つに
己の顔を映し見る
そこには、経験の爪痕が
無残な傷となって刻まれている
その宝石を
そっと押しあてる
叫びをこらえ続けた口元に
涙を堰き止め続けた目元に
教えを遠ざけ続けた耳元に
石は、微かに震えて
共感という名の振動が
両者を一つにする
そして
路地裏に残される一輪の薔薇
初めて根付く場所を見つけた心が
人目のない場所で
風もないのに、そよぎ続ける