花びら舞う夜にみつけたハッピー
秋葉竹


  

そういえばわたし
ハッピーになったんだった

だから夜が好きになって
バランスのいい安心を
抱いて胸を撫で下ろすことができるんだ



なにが流れているか
なにもみえないからわらない
同じわからなさが
すこし引き攣った真顔にさせる
海への出口の大きな河を跨ぐ
鉄橋のうえからみおろす

漆黒の波が
振り返らずに海の方角ををみて
しずかにしずかに流れてゆく

三月は
港湾に花びらが舞ったりする

月が照らす沖ゆく客船は
ちいさな島の影にかくれて
いつのまにかにみえなくなった

その島にも
花びらはゆっくりと舞っている
そんな気がする


時間を失くしたことがある

君と重なり合いながら
悲しい涙を流してしまったときだ

それはにどと
取り返しのつかない
ナイフで深く深く抉った傷を刻んだ

どんなにとおくを探しても
み失った船をにどとみつけられない
傷は乾くことなくジンジンと
ドクンドクンと
疼きつづけている

あるいは君のあの泣き声を
聴いた風景がまぼろしだというのなら
港湾に舞う花びらは
悲しみのためにすべて海の底に
沈んでゆくだろう
だから
希いとてなく
暗い海の底に
しずかなハッピーな国があるという
そこで息ができるのなら
君と僕はどうにかすこしは安らかな
気持ちでいられるんじゃないかと

そんなつもりで耳をすませば
とおくて
はるかな
春が来る足音が
聴こえて来たんだ

そのしあわせの星が鳴るみたいな
やさしい足音を聴いたときから

そういえばわたし
ハッピーになったんだった

だから夜が好きになって
バランスのいい安心を
抱いて胸を撫で下ろすことができるんだ







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蛇足ですが
ちなみに一人称複数使っているのは
ワザとです。


自由詩 花びら舞う夜にみつけたハッピー Copyright 秋葉竹 2024-03-13 19:23:22
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