君のうた
秋葉竹




 

猫や猫。
わたしは、なにも、いらない。
わたしは、それほど、悲しくはない。
わたしは、それほど、つらくはない。
ただ耳が痛くて、痛みのあまり、
不眠の夜を、声を抑えて耐えている。

そういえば君は、人は弱いから嫌いって、
そんな理由で君は、猫になったんだったね。

そう、そんなにも、美しい声で鳴く、猫。
追えば逃げるし、振り返らないし。
追わなきゃ、擦り寄り、みゃあとなくし。
生きていける世界が、どんどん狭くなって
君に逢える天国の外では、笑っていても、
なにかを失ってしまって、ばっかりだ。

猫や猫。
わたしは、なにもいらない。
ただ猫とふたり連れで、街をあるいたり、
夕方、早く夜が来ないかなと、ただ待つ。
ありがとうを云っても、よいけど、
どうせ君は月に帰りたい、猫。
ジッとわたしをみて、尻尾を振って、なのに
すぐにあっちを向いて、みゃあと鳴くだけ。


 








自由詩 君のうた Copyright 秋葉竹 2024-03-12 01:16:31
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