ユダヤ銃
室町

美しき装丁の本をめくれば
白紙のページに栞のみありて
雷鳴遠く響き渡る夕暮れ

黒蝶の羽ばたきの音聞きたくて
野に出たる子の
帰りたる手に銃の薬莢

蝶を捕らえるに
ライフルを構えておりし初年兵は
愛苦しきゲーム大好き少年

雨垂れ石を穿つとて
流るる水は洪水となりて物語る二千年
土葬の憤墓を洗い流す

朝は柱へ
夜は小便小僧にお辞儀して
美しき白宮の老主人は
尿もれ介護パンツをはいて
号令する

民主主義のため
自由のため
平和のために皆殺しにせよ
東のカラス
中央のねずみ
北の熊

酔いしれたように歌う人たちが
旗をふり
轟き渡る声は
ぼくは
リベラル
ぼくはリベラル


自由詩 ユダヤ銃 Copyright 室町 2024-03-03 16:19:06
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