器
soft_machine
朝のみそ汁から
かつて棲んだ磯の香りがした
循環する水にうまれるいのちのすき間
それをすくいそそぎ入れた
湯気が消えてゆく空にうかぶ
一羽のかもめ
炊きあがった純白の粒を
ほそ長いゆびからそっと浸すと
その身体へ、返すのだという
笑顔がたまらなく眩しく
何でつかみ何につつむのか
択びながら忘れてという
こぼしてもいいのだという、こぼれた場所も
この星の上のどこかなのだから、と
器のへりにくる羽虫の舌が
ひかりをあびて濡れながら
器の底に憩いつつある魚の凹みをなぞる
金属・枯れ木・焼けた土、その他