母のこと
短角牛

母は とっても母である

家に虫がでれば 騒ぎながらも冷静で

しかしスプレーが見つからないと慌てていた


ある時

アシダカグモが 卵を抱えて現れた

「ぎゃ」といいつつ 母はスプレーを持ち

かけた 殺戮の雨を ひどく十分に

蜘蛛は 動きが鈍くなった

そして

もうだめだと思った時 卵を捨てて最後の逃避を試みた

しかし 母は蜘蛛を捕捉し 絶命させた

捨てられた卵からは わらわらと子蜘蛛が沸いてでた

なぜか手を止めた母は

「はやく はやく」と慄く私を背に

母蜘蛛を見ていた

我が子を捨てざるを得なかった 母を見ていた

際まで守ろうとした 子らを見ていた

もしかしたら 慈しんでいた

私のために 母は 子らを殺した



私は母になれない

でも 母とはああ言うものなんだろうなと

あの日の母に 今でも学んでいる

母のこと










自由詩 母のこと Copyright 短角牛 2024-02-21 00:06:47
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