再生 ―空洞という名の根のしらべ―
菊西 夕座
これから星めぐりのしらべはもっとよくなることだろう、
それよりもすばらしいのはわたしのなきがらが蟻にはこばれること
そこでながされる血は路ぼうのおくちをたびするだろう、
はじめてきくクジラのようなモグラの美声と鎮魂歌
蟻たちは脚にみえるけんばんでそうそう曲をかなでながら
あれ地の音かいをここちよくたがやしていく
わたしのにくへんはミからシへ、シからファへ、
ファから墓へとはこばれるだろう
そこからちかへおりていくときの胸のたかなりは
かつてのこどうを千倍速でもみほぐす
そのときの快かんがこまぎれのしんけいをかけぬけ
くしざしの電りゅうでさいぼうを射ぬいていく
ふたたびれんけつされた生けるしかばねは
にくへんをたいまつにかえて蟻たちを各かいそうへみちびくだろう
そうしてちかのめいきゅうをにんげんの骨ぐみにへんせいすると
いりくんだろっこつの回廊がこきゅうをとりもどし
もっともおくぶかい頭蓋骨のあなぐらにいぶきをとどけ
ゆめみながらさんらんする女王蟻の声帯をふるわせる
ひびきわたる誕生歌のほめうたがめいきゅうをかけぬけ
蟻たちをナビゲイトとしたたいまつの炎をけしていく
わたしのなきがらはそのようにして浄かされ
かつてのほねぐみに設計された巣あなをつたい
ながされた血でカーペットをしきつめると
わたしのたましいはちかにくうどうの根をはりめぐらせる
やがて芽をだすだろうラベンダーのむすめたちは
モグラが潮ふいたゆたかな幻そうのなごりをえんじる
その薫香劇にさそわれて土ぼこりがワルツをおどり
けんばんのばんそうがうもれた屋台骨に音かいをさずける
ちじょうをはしりぬけるうつむきのランナーは
ちていにあし音のなみだをはんきょうさせながら骨みをかるくする