セピア色に閉じ込められた表情は
硬く結ばれた口元と
こわばる頬
眼差しだけが生きている
たった一枚の写真

逢った事のない親族の表情は
戦闘に出る伯父を中心に
こちらの世界を見ていた

参る者のない墓標が有るらしい
一年前
人づてに聞いた叔父の訃報
そこでぼくは
初めて失われた者たちを知ることになった
梨の花咲く木の元に眠る墓標を訪ねてみよう



　　　　　　　　　　　　　　初出　日本ＷＥＢ詩人会　2024/02/15