文化の中心
なけま、たへるよんう゛くを

ごめん下さい 駅員さん
―はい

文化の中心へはどう行ったらよいですか
―難しいですよね 教えますよ

助かりました 簡単だったのです、少し前まで
あのあたりに住んでいたころはよかった 夢のようだった
文化の中心には何でもありました 道ゆく人は文化人だらけで
文明的な乗り物が 文明の谷を駆けぬけてゆく
ともし灯 溜まり場 着物屋 詰所 どれを取っても 文化の結晶みたいで
こんな私でさえ 送る毎日に華があった
ぜんぶ、ぜんぶが見る影もない 古寂び 縁欠いて くすんでしまった 留守の間に
だから駅員さんに聞きたいのです 誰も文化の中心を捨てて どこへ行きたかったのか
この世の盛りを後にして 行き場なんてわからない
どうやって私は 文化の中心に戻ればいいのですか?

―簡単です 全て とんでもなく早い話
 文化の中心は移り変わります
 変身し 活躍し 震動しています 常に
 今夜、文化の中心は あなたの歩調に重なりました

私が?傲慢ですよ
―傲慢です そうですとも
 皆が裸になる時には 服を着ていると傲慢なのです
 おかげで私は 馬車が来て スポーツカーが来ても 戦艦が寄せて来たとしても
 あなたに向かって旗をふらねばならない
 みじめな仕事に成り下がった
 行って下さい 私を見るな、怪訝な目で
 行け!どこへなりとも!
 ノロノロしてんじゃないからな!

どうせ 春が来て この戸惑いをも
一瞬に吹き散らしてしまう


自由詩 文化の中心 Copyright なけま、たへるよんう゛くを 2024-02-13 23:11:59
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