泥の木がじゃーめいているんだよ
室町

ふん
死にぞこなったお陰で
化け物たちを見ることになった
見たくなんかなかったな
見たくなかった
人間の化け物なんか見たくはなかった
いやあ見事につくろっている
純白の衣をまとって
匂い消しの香まで焚いて
でも
指がね
人の道や SDGsや
外国人差別を語るときの
靄のように白くかすんだ貌の下
机の上に置いた手の
指がね
勝手に
にょろにょろと動きまわっているんだ
耐えきれずに
ヘビのように
指先のひとつひとつが鎌首をもたげ
顎をひらいて
それぞれ勝手な方向に首を伸ばそうと
あがいている
それを片方の手の指が隠そうとするが
今度は隠そうとしたほうの指が.....
またにゅるにゅると動きだす
メガネの男は
唇を歪め──無理に嗤っているが
似合わないことばに汗をかきながら
正体を隠そうと格闘している
まるでゴムマスクのような
頬と首は
いまにもかたちを失いそうに
ぎりぎりのキワでふんばっている
と、
画面が歪み
赤青のグラデーションがかかり
突然
ぶるぶると震える一本の泥の木が
映った
と思うと
NHKの例のロゴになり
例の
ぴーーーーーーーーーーーーー


自由詩 泥の木がじゃーめいているんだよ Copyright 室町 2024-02-13 08:56:11
notebook Home 戻る