無題
凪目
それは死体だよ
もう死んだ女にあなたは絶えず声をかける
それはずいぶん前に腐敗した皮と骨だ
何十年もゴミと虫が巣食っている
あなたがそれを生き物だと勘違いするのは
彼女が動いて話すから
まるで生きているみたいに
ときどきひどくきれいに見える
それは穢れた窩だ
耳を貸さないで
僕は彼女の墓守りで
彼女が誰かに取り憑こうとするとき
たしなめたり
ささやいたり
撫でたり
抱きしめて祈ったりする
どうかみんな幸せになりますように
これ以上誰も苦しまなくてよくなりますように
彼女は笑って僕を踏みにじる
僕は彼女をすごく大事に思ってる
彼女もきっと僕を愛してくれていると思う
彼女は契約と所有の効力を信じる
僕はそれを信じない
彼女がこれ以上何者も呪わないように済むためなら
僕はなんでもやろうと思う
弔わなければならない
怖がらせて悪かった
本当にすまないと思ってる
もう行くよ
達者でね