小さなエイ、ポーラが笑う。
田中宏輔


ウププププ。
「あなた、サツマイモのにおいがするわ。
 それも生のね。
 けっして焼きイモじゃないわ。」
恋人のドリーム・スネークが
どもりながら反論する。
「き、きみだって。」
「きみだって、なによ。」
「きみのにおいがする。」
「あたりまえだわ。」
ふたりは、うんこで耳をふさぎながら
網膜を交換する。
ウププププ。
それとも
うんこが、ふたりの耳をふさぎながら
網膜を交換するのかしら?
けっして見てはならないもの。
「そんなことないわ。
 じゃんじゃん、見つめ合うのよ。」
だれに向かって言ってんだよ。
もう戻れない。
愚かなふたり。
こんなところにまで
ラブ・ツギャザー聴きながら
ふたりだけで盛り上がりながら
街じゅうに、うんこを振り撒くの。
振り撒き散らかして
練り歩くのよ。
うんこがね。
うんこのふたりがね。
アハッ。
それにしても、きみは、うんこが好きだね。
あなただって好きでしょ。
みんな、好きなのよ。
うんこも、みんなのことが好きだわ。
さっ、
ウォー・ペイントのように
顔じゅうに、うんこをなすりつけながら
街じゅうを練り歩くのよ。
ウププププ。
ブリッ、ブリッ。
ブッスーン、ブリ、ブリ。
そうすれば
街じゅうが、幸せの顔に満ちあふれるの。
すてきなふたり。
忘れられないラブ・ライフよ。
ウププププ。
小さなエイ、ポーラが笑う。
ウププププ。




自由詩 小さなエイ、ポーラが笑う。 Copyright 田中宏輔 2024-02-12 00:20:28
notebook Home 戻る