トーク・サウンズ・テキスト。
竜門勇気
きみはきみの
とても大変で大切なはなしをしてるけど
スピーカーはスピーカーで
くだらない音楽をずっとずっと
こんなクソみたいな部屋で鳴らしつづけてきた
わけなのですから
きみは
ひょっとしたら
明日、あまりにも憤りが過ぎて
死んでしまうのかもしれないと言って
ぼくの言葉を待つわけだけれども
ぼくは正直わずらわしい
明日死ぬかもしれないきみは
もう、めんどくさい
きみはきみの
とても大切で今しかないという感じではなしをしてる
ずっとしているわけなんだけども
ここで鳴ってるスピーカーは
いつ聞いてもいつでも同じクソみたいな音楽を
今も歌ってるわけなのだから
正直なはなし
正直なはなしは
きみのこの部屋の音楽には
とてもかなわない
ねむたいよ
ねむたいよ
この場所で聞こえる音の中で
きみの大切なはなしが一番ねむたいよ
ここからきみがいなくなったとき
きっとはじめてきみを思い出すんだろうなって思うくらい
きみはぼくが思い通りにならない場合は
消えてなくなると言っている
ぼくが浮気や暴力をやめないとそうする、と言っている
たぶんそんなことを言っている
ぼくはそんなことをしたのか?
そんなことをしたのかもしれない
なんだかよくわからない
やめるよ、と言ってみる
音楽がでかくなる
耳の内側でシケモクが水を吸って膨れていく
きみは上手に嘘を看破する
ぼくは自分の嘘を認識できない
きみはぼくを信じないしぼくは音楽に夢中だ
きっととても大切なはなしなんだ
わかってるよ、と言ってみる
きみは上手にぼくを刺す
肘につたう血
いたい
真夜中の暗闇の世界で蛍光灯の青い光は
実際よりずっとここを寒く感じさせるための道具
怒声を割って窓に雨粒が打ち付け始めた
寒々しい光と熱の世界
黙り続けていた
フローリングの溝に血が伸びるのを見ていた
春に買った鉢植えに生えたカビも時々見た
雷鳴
停電
た、た、と血が落ちる
きみははなしを続ける
ぼくは急に耳がよくなった