月に添う
ただのみきや

ふりむけば裸のまま
眠りに落ちる月
しわひとつない空のシーツ
蒼白の 
ひんやりした頬
東雲は遠く
高台から見える町並みは
靄の中から生まれたばかり
橋の上 羽音が
明けの夢の掠めていく


古い家の玄関
夏の陰影
なつかしい顔
車窓を眺めて酒を飲み
強い衝撃で空へ飛ばされ
気が付けばジェットコースター
てっぺんの鉄柵に片手でぶら下がっていた
すぐに刑事が上がって来る
会っていたことを知られたくない顔が三つ
思わせぶりな虚言の調合
なぜか仕事が気になり出す


目を覚まし
いま 仕事へ向かっている
夢と地続きの
ねじれた環の上を
景色ははかなげで美しく
すべてはばかげて意味もなく
ただ なにかを見つけ
なにかとつなげ
自分のどこかに埋もれたままの
遺跡や化石を映そうと
むかし 誰かが星をつなげて
名前と寓話を添えたように



                       (2024年2月3日)










自由詩 月に添う Copyright ただのみきや 2024-02-03 18:22:54
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