桜前線
ミナト 螢

固く結んだ唇を
解く時が来た
まだやりたいことがある  
諦めないで夢を見た
何度目の朝でも
バターを塗るように
目標の四隅に
春という風呂敷を広げて
もう一度だけ飛びたい

柔らかい風が
吹くのを待っていると
瞳の中で泳ぐ桜の花びらは
コンタクトレンズみたいに透き通る

すれ違う人の顔とか
咲いている花の匂いとか
淡いピンクのフィルターで
優しく補正されたりする時間を
感じながら

北上する前線に乗って
世界が明るくなるのなら  
まあるい頬を見せ合って
やがて埋もれていく
桜が散る前に


自由詩 桜前線 Copyright ミナト 螢 2024-01-31 22:09:56
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