雨神
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ここでずっと
花が咲くのを待っている
小さな神様でありたい

霧のような明るい雨が
柔らかい芽にしたたる
その明るさは血と同じ
うつくしいもの

いつかも人間であった
小さな神様は
はにかんで笑う

神様の歌は風の気まぐれ
踏みしだかれた憎しみを
そっと胸に抱き寄せて

目の前の神様が見えず
神様、と叫びながら
群衆に沈んでいく心に

小さな神様が
黙って
涙する時

花が咲き
土が見えない程の
うっそうとした愛が繁る

遺髪を切るはさみで
夜を束ねる
その神の名を朝という

花が咲き誇るたびに
春だと嬉しそうに
したたる雨を口に含む


自由詩 雨神 Copyright 303.com 2024-01-28 12:15:57
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