ただ働き
トビラ

始発の朝に
腹を割いたら
群青があふれだし
膝をついたまま
脱落を選んだ

履歴書はよく燃えて
約束された未来は焼失した
何者にも名づけられない自分が
裸で社会に投げられ
すりむいた傷からながれる血は
群青色だ
それならまだ
あの夏の扉を開けられる
サバンナの草むらに
息をするチーターのように
虚空をみつめられる
信じられない瞬間の目撃者になれる

歴史に紐づけられた宿命を
素数だけで解いて
未来から転生してきた子どもたちの
厄災の地図を参考に
神前の祝詞と魔法の呪文と
交差する中庸の言葉とで編んだ
菊理媛様の胸中を書きとめ
改竄された正史の裏の食堂
うどんをすする
隣には魔将軍の一柱
タバコをくゆらせあくびをする
正史裏の食堂で魔将軍と交わした密約は
魔軍の解体案
時給の発生しないお仕事は
汗が流れてご飯がうまい


自由詩 ただ働き Copyright トビラ 2024-01-22 23:14:47
notebook Home 戻る