回送バス
リリー
バスターミナルで
ステップ降りるパンプスに
纏いついてくる
外気の 重み
耳の端 掠める
年明けの駅前で戯れている人達の談笑は
夜陰に白いレース開いた
烏瓜の花
終点の停留所から
発車するバスの運転席に残った
鈍色の影
を 見送って
腕時計に目をやると
さっきまでの居酒屋の賑わいから
半時間ほどしか経っていない
ハンドル握ったまま
降りる客へボソリ と挨拶した
無愛想な中年男性、
顎の下に剃り残した髭が
目に浮かんで消えた
駅ビルのホテルの窓が煌めくほどに
路面は黒々と沈み膚ざむい
そんな短い 間に
私の中で
魂が愛を求めていた