橙色のセーター
リリー

 
 うつくしい
 目に見えぬ砂ぼこりに 
 高い樹々が 小さな流れを抱いて茂り

 不思議な程 ぼうっと目蓋に映る
 咲きもしない白い小花
 
 伊吹の頂に残る雪
 田圃はまだ すきかえされていない
 そんな時
 伊吹山から直接吹く風が冷たくて
 こぶしを握りしめて歩いた

 かつて春照という村が伊吹町になり
 現在の米原市
 とある農家の庭に
 柔らかそうなセーターが干してあったのだ

 午後の天空は晴れながら
 しづかに 山から流れくる
 沫雪
 橙色のセーターの
 うづきの様なものが、私の胸に響いてきた

 


自由詩 橙色のセーター Copyright リリー 2024-01-17 19:49:36
notebook Home 戻る