A/wa
あらい
観客が立ち上がると
わたしは魚になりそこねて
また化粧室の蛍のよう浅い渚の飴玉、
ハミングしたんだ、追いかけるように
誰かのかわりになって
担って、産まれていった
無音のクラッカーは香りない
ショートした線香花火をよぶ、
わたしの影は どこにでもあるようで
見つからない呼吸のそこ。かしこ、
確かに 弾けて混ざる。
オールを手放してから また溺れるよう泥む、
なにか辿るように
佇んで 足音を携え、
この耳に酸がるよう
遠景に潜り込んだ
……破船〈さなとりうむ、〉
風がある、ただ気にもならない
多分、
おおよその琴殼は潮汐に霞んでいる。
荒く畳んだ真砂の付いた片腕
で、新たな羣情の鉛筆を摸る仕草をみたい
譬えるなら おんなの
かたわらにはおとこがいて
小指一本 もいで、
くちにはこばされた まぐわいだった
鈍くうたった子雀が死面に告る
抓るなら 羈絏のいろは。
――だいぶ あられもなく〝燃ゆ〟
一端の節々は
乱れ、軋み、撓み、
歪んだ正膣を醸す
箱庭よ。
〈盆栽の、躑躅/屍/椛〉
手の内にあるようで
稀有なもの、
今とは 限りなく遠くて 近くに為る凡人
知らぬだけ、
疾走らずとも
底にあり
こおりまなこの蓋 詩片
夜汽車は音もなく すべり どこか曖昧にわらう
けれど あなたたちは あえて みにくい