走る!
田中宏輔


ズズズズズズドンッと
とつぜん、学校が
手足をのばして
立ち上がる

で、ドドドドドッスン
ドスンと、しこを踏むと
走り出した

窓から、扉から
子供たちがこぼれ落ちる
こぼれ落ちる

成績のいい子も、悪い子も
お金持ちんちの子も、そうでないうちんちの子も
みんな、みんな、こぼれ落ちる

それでも、学校は走る!
学校は走る!

校長先生は
しがみついた机ごと
部屋のすみにぶつかる

教頭先生は
ひっくりかえった姿のまま
電話線の抜けた受話器をにぎる

それでも、学校は走る!
学校は走る!

窓から、扉から
子供たちがこぼれ落ちる
こぼれ落ちる

先生たちもこぼれ落ちる
授業参観にきた父兄たちもこぼれ落ちる
みんな、みんな、こぼれ落ちる

それでも、学校は走る!
学校は走る!

グラウンドにいた体育の先生が
(嬉々として)学校に号令をかける
走れー! 走れー! と
手を振り回して叫ぶ

用務員のおじさんが
ホーキをもって通せん坊をする
社会の先生が
あわてて校門を閉める

それでも学校は走る!
学校は走る!

校門けちらかして、走る!
走る!

ひとも、車も、けちらかして、学校は走る!
走る!

家も、ビルも、何もかも踏みつけて学校は走る!
走る!






自由詩 走る! Copyright 田中宏輔 2024-01-08 09:25:43
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