ひとり
Giovanni

風が強く テントを打った
毀たれるような寒さの中で
ストーブにあたった

5つの頃 寂れた駅の入口で
飴色の夕日の中で
吹きすさんだ風と
おんなじ音が聞こえてきた
目を閉じると
あの日の僕が見えてくる

あの日 あの時 
いつしか いつか
こんな夜を迎えるなんて
誰が思ってみただろう

おおうぃ 聞こえないのか
君のちっちゃな顔 不安げな眼差し
か細い身体 赤く霜焼けた両手
ずっと 見続けてきたんだよ
だから こっちを向いて 
言ってみないか
寂しかった と

さてはて こんな寂しさなどは
いつまで経っても消えはせぬ

風が強くて 火は焚けない

薄茶色の幕の中
ストーブの青い火を
ひとり 
ひとりで 愛でながら
ゆっくり
ゆっくりとお茶を飲んでいる


自由詩 ひとり Copyright Giovanni 2023-12-26 14:00:07
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