冬のばら
リリー

 小学校の正門前
 通学路を跨いで並び建つ民家の
 玄関先に置かれる
 バラの鉢植え

 通勤途中に
 つぼみが、
 いつまで経っても
 開かないわ と思っていたら
 その日
 薄茶色にしおれている

 かたく 巻いたままの
 花片が茶色くなったなんて

 「おはよう!」
 彼方まで 透きとおっていく青年の声は
 登校して来る子供達の靴音に響き
 耳にとらえきれないお喋りが
 細く 薄くなって
 どこか ものうく
 リズムの感じられないまま
 駅へ向かう

 ああ、冬晴れの空なのに





自由詩 冬のばら Copyright リリー 2023-12-26 12:53:13
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