ひげ茶
春日線香

都で流行っているひげ茶です
これはご丁寧にどうも
と、そのような取引があってから
何度か顔を洗って
学校にも行きました
戦争があったかもしれません
泣いて帰って戸棚を開けて
ざざーっと海の音をさせて
とろとろ煮出して飲むと
これはこれでおいしいような
いやこれはかなりおいしいぞ、と
血眼で電話して
そんならまた持っていきます
そう仰っていたのに
もうあれから二度と来なくて
死霊の国と現世との間にある
大岩をごつごつ叩いて
あのお茶
あのお茶でないと駄目なんです
聞こえていますか
あなたが千人を殺すなら
わたしは千五百人を生んでみせましょう
その前にもう一杯お茶が
あのお茶がほしい
ここらで一杯ひげ茶がほしい
はやく
はやく
生きてる間にひげ茶がほしい


自由詩 ひげ茶 Copyright 春日線香 2023-12-26 01:06:02
notebook Home 戻る