リリー

 加茂川べりに
 あの人が佇んでいる
 錯覚だとは
 電車の中で気がついた

 冷たい舗道に降りてから
 しっかりと足早に歩きすぎながら
 それでも後ろを 振り返ってみたかった

 誰の足音もしない
 あの人が 私の心に
 触れても来ない

 人影のない
 樹形晒した一本道を歩きながら
 何の力も感じなくなった
 糸の切れた凧の様

 まつわり ぶら下がっていた
 数々の想いは
 皆 消え去って
 ただ空の高さに驚いているだけで
 漂っている

 恐ろしくはないのに
 何かが 私の体の中にさざめいて
 確かに街の灯から 遠ざかっている

 
 

 
 
 


自由詩Copyright リリー 2023-12-24 17:01:43
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