寿司【改訂】 
レタス

鯛       花は桜いろ
サワラ     甘やかなピアノのメロディーは
赤貝      血潮の香りが胸を刺す
はた      深く広がるハーモニー
つぶ貝     彼方を眺め噛みしめる
えんがわ    脳内麻薬が溶け出して
シンコ     みどりの風はさわやかに
ホッキ貝    喜びの交響曲が草原をさやさやと
イワシ     何時もと変わらぬ優しさで
クエ      森の奥深くわけ入った

飛魚      少年は空を飛んでいった
黒ソイ     透明な真夏の風に乗って
カツオ     たぎる血潮が入道雲を目指す

ホヤ      潮の香りは甘くくすぐ
ボタン海老   夢の中に言葉を忘れた
シマアジ    花盛りに香る少年は
カンパチ    白く弾む若々しさと
ヒラマサ    いさぎよい若者の腕を得て
スズキ     高鳴る空に何処までも行く

カレイ     秋風は透明な水のいろ
秋刀魚     青い空を駆けてゆく
サーモン    十五歳の頬笑みは
うに      熟女の頬笑みをいざなった
穴子      五十路の含蓄がんちく

卵焼き     亡くした母の慈愛
イクラ     彼方に幼い瞳を光らせ
コチ      忘れかけた歌を想い出し
イシダイ    磯からの便りは遠く遥か
アイナメ    冷えた肩を甘く抱く

金目      悟りの美音は
のどぐろ    甘やかな琴の旋律
イカ      和音に合わせて群れなす群衆
タコ      孤独な哲学者は言った
サヨリ     少女の指に騙されるな と

とろ      血脂の戦慄は変わらぬままに



少年は遠く水平線を駆けて行った


自由詩 寿司【改訂】  Copyright レタス 2023-12-23 13:35:07
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